障害者の性と恋愛の映画なら、「oasis」を見ればいいと思うよ。
先日ニュースで、障害者の性と恋愛を扱った「パーフェクト・レボリューション」のニュースを見た。今まで日本では扱われてこなかったテーマだけに、注目されているらしい。
が、海外だと、障害者の恋愛などをテーマにした映画はけっこうある。なかでも私が絶対に見てほしいのが、「oasis」という作品だ。
※以下、ネタバレがあるのでご注意ください
たんたんと差別をえぐり出す物語
「oasis」は、2002年の韓国映画だ。もう15年も前の作品だが、こんなに斬新な作品はないんじゃないかと思う。
あらすじは、前科者でチック症状がある主人公と、重い脳性麻痺を患ったヒロインの恋愛ストーリーだ。生きづらさを抱えた二人のやり取りが、実にたんたんと描かれている。
しかし、いわゆる「普通の人」ではない恋愛は、うまくいかない。ヒロイン家族の邪魔が入って、主人公はまた刑務所に逆戻りしてしまうのだ。
この「邪魔」というのは、ヒロイン家族が無理やり二人を引き離そうとしたワケじゃない。ちょっとした勘違いから行動した結果なのだが、それが見事に「無意識の差別」をえぐり出しているのだ。
重い障害者は、恋愛などするはずがない。ハッキリした言葉は一言も出てこないのに、健康な人のなかにある「差別の共有意識」を見せつけられる思いだった。
「バリアフリー」を声高にさけぶよりも、そういう出来ごとをたんたんと伝える方が、よほど「差別ってヒドい」と観客は考えさせられるんじゃなかろうか。
ヒロインの演技がスゴい
ヒロインは脳性麻痺を患っているといったが、演じているのは障害を持ってない女優さんだ。が、映画のなかのヒロインは、本当に重い脳性麻痺にみえるのだ。
ただ手足が硬直しているとかじゃなくて、背骨などを始め全身が固まってしまっている。人と話すこともひと苦労で、緊張すると余計に硬直してうまくしゃべれないという症状まであった。
はなしの途中でちょくちょく、ヒロインの「もし私が脳性麻痺じゃなかったら」という想像シーンが出てくる。その中のヒロインと現実のヒロインが同一人物だというのが、とにかく衝撃だった。
ヒロインを演じた女優さんは映画の撮影が終わったあと、歪んだ骨格をなおすため治療を受けないといけなかったらしい。多分ここまでてってい的に役作りできる役者は、ほかにいないんじゃないかとも思った。
障害者も対等な人間
oasisを観ると、障害者も同じ人間なんだよなと思う。色んな欲求を持ってて当然なのだ。
障害者や弱者を扱うというと、やたらと「ここ泣くところですよ」みたいに感傷的に描こうとすることも多い。だがoasisは、そういうところが全くない。感傷・感動というのも、やり過ぎると差別だ。
さらにマイナスの差別に限らず、障害者は人畜無害のような思い込みもある気がする。もしかしたら悪人だっているかもしれないのに、「障害者=弱者で被害者」という意識がどこかにありはしないか。
ちょっと前にも、航空会社が車椅子の人を断ったといってバッシングされていた。が、事前に車椅子を断っていたところに無理やりきて、無理やり乗り降りしていくというのはマナー違反の面もあると思う。
障害のせいでできないことを、周りがサポートしていくのは必要なことだ。が、「どんなときも障害者を優先すべき」みたいなのは、スジが通らないとも思う。障害があってもなくても、そこは同じ人だ。
日本ではまだまだ、弱者に対するサポートというのは二の次だ。どんな人でも暮らしやすい世の中になるには、あと何十年かかるのかも分からない。
最初にいった「パーフェクト・レボリューション」は、2017年9月末の公開だ。これをきっかけに、もっと「oasis」も注目されるようになればいい。