妊娠した女性の相談にのる「にんしんSOS」。ぜひ全国に開設をしてほしい。
昨今、妊娠というのは必ずしもおめでたいものではない。そんな妊娠に悩む女性の相談にのる、「にんしんSOS東京」なる窓口を紹介したい。
妊娠が分かっても、色々な事情で周りに言えない人も多い。もし何かあったときのために、こういった窓口もあるのだとチェックしてみてほしい。
妊娠で困ったらまず相談
にんしんSOSは、メールと電話から妊娠女性の相談にのっている。相談自体は全国から受け付けているが、主に東京に住む人の相談がメインだ。
相談内容が外に漏れることはないので、家族やパートナーに相談出来ない人でも対応してもらえる。気になる電話代も、「最大30円」しかかからないから安心だ。
実際にんしんSOSに相談して、問題を無事に切り抜けられた人もいる。妊娠した本人に限らず周りの人からの相談も受け付けているから、悩んだらまず相談してみるのはどうだろうか。
産む、産まないは自己判断
にんしんSOSのサポートで特徴的だと思ったのは、産む・産まないは本人の意志で選ぶということだ。
こういった妊娠の相談窓口というと、イメージとして「産むのが前提」と思いがちだ。が、にんしんSOSに相談をした結果、中絶を選ぶ人もいるのだ。
もちろん妊娠したら、そのまま生んで育てられるのが一番の理想だ。しかし現状、それが難しいケースもある。そのためにんしんSOSでは、やむなく中絶という選択肢も用意しているという。
生んでから育てるのが難しいというときは、養子縁組などの手続きも手伝ってくれる。妊娠の途中に限らず、出産の後でも相談に乗ってくれるのは心強いんじゃなかろうか。
児童虐待死の60%が「生後0日目」
にんしんSOSの窓口ができた裏には、赤ちゃんの児童虐待の問題がある。児童虐待死の60%が、なんと生後0日目の赤ん坊だというのだ。
これはつまり、「出産をしてそのまま捨ててしまった」などのケースが大半だということだ。突然の妊娠を誰にも相談できず、一人で生んでなんとかしようとする人が多いんだろう。
これは悪意をもってそうしているというより、半ばパニックになって捨ててしまったというケースのようながする。特に妊娠や出産に関する知識がない若い女性ほど、こうした事件になることが多いんじゃなかろうか。
もし周りに相談できる窓口があれば、生んだ赤ん坊を捨てる必要もなかったかもしれない。これは個人の問題というよりも、もっと社会全体で何とかした方が良い問題だと思う。
虐待は母親だけの責任か?
生後0日目に限らず、児童虐待があるとまずは母親の責任云々という問題になる。子供を死なせるとは何事かと、その母親個人が色々と責められるワケだ。
確かにろくでもない親はいると思うが、児童虐待の事件の全てがそういった母親のせいではないとも思う。中には頑張って育ててきたが、ある日限界が来て虐待にいたってしまったという場合もあるはずだ。
今話題の「ワンオペ育児」しかり、日本では母親ばかりに責任が偏りすぎている。そういった「子育て=母親任せ」という姿勢も、児童虐待が無くならない原因の一つじゃないのか。
大体パートナーが妊娠したというのに、相手の男性が何もしないというのもどうなのか。妊娠したら連絡が取れなくなったなど、無責任な仕打ちをする輩もいる。
が、シングルマザーによる児童虐待死があっても、そういう男性側の責任にはならないというのが実に理不尽だ。男性に見捨てられなければ虐待死が防げたかもしれないと思うと、責任は母親と同等以上にあるはずだ。
やはり性教育は力を入れた方がいい
そうした望まない妊娠が無くならないのは、性の知識が無いのも理由の1つだと思う。にんしんSOSの代表である中島かおりさんも、日本の性教育は先進国の中でも遅れている傾向にあると言っていた。
しかし性の知識が無いまま大人になれば、望まない妊娠や性病にかかる危険が増える。子供の頃はタブー視しておいて大人になったら自由ですよというのは、免許を持ってない人間にいきなり車を運転させるのと同じくらい無茶なことじゃなかろうか。
そうやって下手に秘密にするから、独学で偏った知識ばかりが増えてしまうというのもある気がする。そうして偏った性の知識で苦労させられるのは、圧倒的に女性の方が多い。
どうせ避けて通れない道なら、早めに学校でしっかりした知識を教えた方が安全なはずだ。女性の社会進出云々というなら、妊娠・出産を始め、身体の仕組みを正しく教えることも大事じゃなかろうか。
突然の妊娠について相談できる窓口というのは、まだまだ少ない。にんしんSOSは、悩む女性を助けてくれるとても貴重な場所だ。
今はボランティアで成り立っている団体だが、もっと国が補助を出しても良いと思う。東京に限らず、全国にこのネットワークが広がってほしい。