中二っぽいけどマジメな哲学書。黒川伊保子著「英雄の書」感想
脳科学者として有名な黒川伊保子さん著「英雄の書」の感想だ。タイトルで誤解されそうだが、立派な脳科学の本である。
英雄は、ほかならぬ自分の脳が作り出す。考え方・習慣1つで、人は凡人にも英雄にもなる。世の中でくすぶっている人に、ぜひ読んでほしい一冊だ。
英雄とは?
黒川さんいわく、英雄とは「上質の異質」な人のことだ。ただ上質なだけじゃなく、オンリーワンも兼ね備えている。
本の中で英雄として紹介されている人には、
・ココ・シャネル
・スティーブ・ジョブズ
・アインシュタイン
などがいた。確かに異質っぽいところから、上質に登りつめた人ばかりだ。
むしろ無名な英雄の方が、世の中には多いんじゃないかと思う。何かを突き詰める人は、誰でも英雄になれるチャンスがあるからだ。英雄が皆、超有名人とは限らない。
英雄の脳をつくる習慣
もちろん一般人の私たちにも、英雄の素質は眠っているという。その素質を目覚めさせる秘密は、脳が握っている。
本のなかでは、英雄の脳の条件を脳科学から分かりやすく紹介している。これを実践すれば私たちも英雄になれるかもしれない。
英雄の書はこちらから↓
1.失敗を失敗と認める
黒川さんは、脳を成長させるのは失敗だといっている。脳は失敗した思考回路を削ぎ落とし、必要な回路だけ残していくのだ。
「へえ」と思ったのは、他人の失敗も自分の失敗として受け止めなさいという点だ。「自分にもなにかできたはず」と考えると、その分脳は成長できるという。黒川さんいわく、自分ごととして捉えるのだ。
他人の失敗はイラッとするが、実は成長のチャンスだった。人の失敗を怒るのは、実にもったいない。いつも周りをせめがちな私にとっても、耳に痛い言葉だ。
ただ、失敗を認めるのと落ち込むのは180°違うとも言っていた。失敗に落ち込むと、脳はかえって縮こまる。クヨクヨや反省は失敗回路を太くして、負け癖をつくるのだ。
「苦労しろ」「悩め」というのも、たくさん失敗しておおいに学べということなんだろう。失敗を恐れず、どんどん色んなことにチャレンジしたいものだ。
2.睡眠
だが失敗しただけではダメで、失敗を脳に認めさせるための時間がいる。その大事な時間こそ、寝ているときなのだ。
黒川さんは、
・22時過ぎにスマホを観ない
・遅くとも0時には寝る
・夜眠り、朝日とともに起きる
ことが大事といっていた。
起きているときの脳は、外からの情報で手一杯で学習のヒマがない。寝ているときは仕事が減り、ようやくインプットした情報を整理できるという。
夜更かし中は、脳が疲れて仕事がはかどらない。日本人の生産性が低いのは、夜までムダに残業ばかりしてるからじゃなかろうか。多分、残業する人は英雄になれない。
3.孤独な時間を持つ
さらに英雄は、孤高であるという。場の空気を読まず他人とつるまない人は、英雄のセンスありだ。
英雄の脳は、みな創造力にあふれている。創造力を生むのは、無意識を担当する右脳だ。
右脳は無意識で大量の情報を集め、処理しているという。そこで考えたことが、ときにスゴいアイデアを生み出すのだ。
右脳を鍛えるには、右脳だけフルに働かせる時間があるといい。そのためには、左右の脳のやり取りを断たないといけない。それができるのが、一人だけの時間だ。
英雄の「異質」とは、孤高のことだと思う。その他大勢を違うことを目指すと、人の輪からはみ出さずにはおれないんだろう。
人とのつながりは大事だが、今は人とつながり過ぎている。ただのコミュ障で結果的に孤独な時間が多い私からも、もっと一人の時間を持とうやと言いたい。
4.身体と脳を動かす趣味
しかし無意識でいいアイデアが生まれても、意識の上に出さないとそのままで終わる。意識を担当するのは、ほかならぬ左脳だ。
左脳は、意識に上がったものを言葉など形あるものに換える。右脳と左脳がうまく連携して、はじめて優れたアイデアは形になるのだ。
右脳と左脳の連携を鍛えるには、身体と脳をいっしょに動かすのがいいという。黒川さんが紹介したなかでは、
・ダンス
・テニス
・自転車競技
などがあった。頭で考えた動きを身体に伝えるスポーツがいいらしい。
スポーツをしないインドア派の私は、パズル系の趣味がよさそうだ。本では、囲碁や将棋がおすすめされていた。
だがどのみち、英雄の脳をつくるには運動が欠かせないという。パズル系の趣味にしても、やっぱりウォーキングなどはした方がいいのだ。
お金がなくて始められてないが、ボルダリングには興味がある。気になりだしてから何年も経つので、いい加減やってみようか。
5.瞑想
脳で考えたことを外に出すには、直感力も大事だ。直感に耳を傾けるには、なんと瞑想が効果的だという。
ただ単に目を閉じるのもいいが、読経などはもっといいという。啓発系の本で瞑想を紹介するのはよくあるが、読経までおすすめする人はなかなかいまい。
日本では宗教はうさんくさがられるが、脳科学的には意味のあることだった。宗教は単なるスピルチュアルとかファッション的なものを超えて、その人の核にせまる大事なものじゃなかろうか。信念・哲学と言ってもいいかもしれない。
英雄にとって大事なもの
英雄にとって大事なのは、自分の信念だ。黒川さんは「自尊心と使命感、自分がゆるせないもの」といっていた。
たとえば前のスティーブ・ジョブズは、配線のゴチャゴチャした美しくない機械がゆるせなかったという。その信念が、斬新なデザインのアップル製パソコンやiPhoneを作り出したのだ。
その信念が正しいかどうかは関係なく、自分がどう思うかが大事だ。自分がゆるせないなら、万人がOKだろうが関係ない。
ゆるせないことが分からないときは、好きなことを見つけるといいといっていた。好きなことを突き詰めると許せないことが出てきて、それが自尊心や使命感を作ってくれるのだ。
多分誰にでも「好きでしょうがない」「どうしても納得いかん」ことが1つはあると思うが、見つけ出すのは難しいことだ。自分のやりたいことや言いたいことを後回しにしてきた人間ほど、分からなくなるだろう。
私も本を読んでから考えてみたが、好きなこと・ゆるせないことが何なのかイマイチ分からなかった。正直、自分のやりたいことがよく分からないのだ。
ブログで活躍する人をみると、たまに嫉妬でイラッとする。なにに嫉妬してるか謎だったが、多分好きなこと・ゆるせないことを持っていることに嫉妬していたのだ。
自信をもって「これが好きだ」と言えることを持っている人は幸せだ。なんとしてもその道を貫いてほしい。
リミットは56歳まで
人生は長いようで短い。焦らず見つけようなどと考えていると、あっという間に歳をとってしまいかねない。
黒川さんいわく、人の脳は50歳をすぎるとなにかの達人になるという。56歳からは、それまでの経験を出力する時期に入る。
ずっとネガティブだった人はネガティブの達人になるし、大して経験を積まなかった人は大した出力もできない。歳を取ってからが本番・大器晩成というのは、それまで脳を鍛えてきた人がいえることだ。
「いつかやろう」などとのん気に構えている人は、多分やらないまま終わる。やりたいことがあるなら、さっさと取りかからないとマズい。
なにもやりたいことがない人は、何でもいいから好きなことを見つける。好きなことが分かったら、なにかをギセイにしてでもチャレンジの時間を作ることだ。
凡人と英雄どっちがいいか?
ここまで英雄のことを書いといてなんだが、凡人と英雄どちらの生き方が幸せなのか。なかには、ささやかで平穏に暮らせればそれでいいという人もいるだろう。かくいう私も、バリバリ活躍できずともいいと思っている。
しかしビッグになるかどうかは、英雄の生き方とは関係ないんだろう。私は2つの違いは、死ぬ直前で後悔するかどうかじゃないかと思っている。
自分の信念にしたがって生きた人は、ずっとやりたいことをやってきたはずだ。たぶん後悔はしない。逆になんとなく生きてきた人は、こんなはずじゃと嘆くハメになるんだろう。
歳を取ってから「若い頃はよかった」などというのはミジメだ。私はそんな年寄りになりたくない。
自分の好きなこと・許せないことにしたがって生きるのは、ある意味でしんどいと思う。しかし後悔したくないなら、その道をいくしかないんだろう。
自分の許せないことを貫くと人は孤高になって、英雄になる。英雄の書は、若者に贈る人生哲学の書でもあった。
これまでぼんやり生きてきた人間にとっては、耳に痛い話が多い。だが50歳前なら、まだチャンスはあるだろう。クヨクヨするより、自分の核になることを探そう。