生きづらい人はぜひ読んで。ひきこもり女子会~わたしたちの生存戦略~感想
2017年6月、ひきこもり女子会に初参加。9月下旬にひきこもり女子会のブックレットをいただいた。ようやく読了することができたので、感想を紹介したい。
今の状況をどうにかしたい。が、周りに相談できる場所もいないしどうしていいか分からない。女子会のブックレットは、そんな孤立するひきこもり力になってくれるはずだ。
ひきこもり女子会とは?
ひきこもり女子会とは、ひきこもりUX会議が主催するひきこもり当事者のための集まりだ。女子会と名がついている通り、参加できるのは女性(性自認が女性の人もOK)のみである。
ひきこもりというと、世間ではまだまだ男性のイメージが強い。当事者の会も男性の参加者が多く、女性が参加しづらいという問題があった。そこでひきこもり女性の居場所をつくろうと始まったのが、ひきこもり女子会だ。
女子会は2016年からスタートし、徐々に活動の場を広げている。2017年秋には全国キャラバンももよおし、北は北海道から南は福岡まで、10都市で女子会が開かれた。
女子会の主催者の方も、皆ひきこもりなどの生きづらさを経験している。体験談なども、同じ行きづらい人間としてとても共感できる。
さらに詳しい女子会の紹介はこちらから⇒引きこもり女性の憩いの場、ひきこもり女子会に参加した感想。
同じような孤独感を抱えた女性たちと話せる機会は、なかなか無い。最初は緊張したが、参加してよかったなと思っている。
ひきこもり女子会のブックレットが登場
そんな女子会の取り組みを一冊にまとめたのが、シリーズわたしたちの生存戦略「ひきこもり女子会」だ。
内容をザッと紹介するとこんな感じ↓
・ひきこもり女性をとりまく状況
・女子会参加者の声&参加レポ(漫画)
・女子会アンケート
・女子会をひらくための心得
・実際に女子会をひらいた人の声
・精神科医、斎藤環氏のインタビュー
ブックレット自体はコンパクトながら、内容は盛りだくさんだ。当事者から発せられた声がメインなので、今現在ひきこもりに悩む人も読みやすい。
女子会に興味があっても、いきなり街へくりだせない人も多いんじゃなかろうか。まずは、このブックレットを読んでみるのもおすすめだ。
ブックレットの感想
そうしてひきこもり女子会に参加したご縁でブックレットをいただいたのだがなかなか読めず、ついに年が明けてしまった。かなり遅くなってしまったのだが、感想を紹介したい。
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参加レポに勇気づけられる
読者が一番気になるのは、「女子会ってどんなところなのよ?」ということかと思う。そんなときはまず「女子会に行ってみた」と、マンガエッセイ「ひきこもりUX女子会に参加して」を読んでみてほしい。
このなかでも特に、マンガエッセイが読みやすいと感じた。参加前・参加中の不安・参加した後の心境など、実際に参加してどうなったのかがリアルに描かれている。
女子会など公の場に参加するとなると、「しっかりせにゃあ」などと意気込みプレッシャーにつぶされやすい。なぜかひきこもりは人一倍、周りの目に敏感だ。
しかしエッセイに描かれた失敗談や葛藤などを読むと、やっぱ皆不安なんだなあと勇気づけられた。悩みを抱えた当事者同士、そこまで肩肘を張らなくても大丈夫なのだと安心できる。
ちなみに私も、ひきこもり女子会に行ってみた感想を書いている。もしブックレットをお手に取ったときは、そちらも読んでいただければ幸いだ。
「人並み」は正しいか?
また、ブックレットの最後にあるインタビューも興味深かった。インタビューしている精神科医の斎藤環氏は、長年ひきこもり問題に関わり著書も出している専門家だ。
斎藤氏によれば、ひきこもりの悩みで大きいのは「人並み」へのプレッシャーではないかという。正社員で働いて安定した収入を得ないと、まともな人生ではないと思いこんでしまうのだ。
女性の場合、さらに結婚・出産などのプレッシャーもある。そういうレールから外れた人たちは、私はダメ人間だと自分を責めてしまう。
しかし仕事も結婚も、自分の自由なはずだ。たとえ安定した職じゃなくても暮らしていけるならそれでいいし、結婚しないから不幸というワケじゃない。
人並みであることをおかしいと感じつつも、その圧力に押しつぶされ悩んでいるがひきこもりの人たちなんじゃなかろうか。レールから外れた生き方がもっと世間で広まれば、ひきこもりの生きづらさも解消されるんじゃないかと思う。
ひきこもり女子会などの集まりは、当事者が互いに共感できるということが大きいという。共感はプラスのエネルギーを生み、あらたに動き出すきっかけをくれる。
ひきこもりにもある格差
斎藤氏は女子会のような集まりの課題についても、インタビューのなかで語っている。それは、集まりのなかでもグループができてしまうことだ。
ひきこもりの集まりも催しの回数が増えると、いわゆる常連さんのような人たちが出てくる。そうした積極的な人たちと、控えめな人たちとの間で温度差ができてしまうのだ。
確かに同じ集まりなら、顔見知りや気の合う人と話すほうが楽しい。グループができてしまうのは、いたし方がないと思う。
だが私のような「座して動かず」のコミュ障は、集まりに参加したもののロクに話もできずに帰ってきてしまう危険性がある。また、その場では話できても、その後も交流を続けるとなるとやはり難しい。
集まりに参加し続けるとともに、そこから新たなつながりをどう作るか?お金がないコミュ障のカレジョにとっても、大きな課題だ。
参加者から主体者へ
しかし人や社会との関わりで苦労してきた経験は、同じような悩みを持つ人の力になるはずだ。事情をまったく知らない人から励まされるのと同じ経験をした人から励まされるのでは、共感度も説得力も天地ほど違う。
ひきこもりの間、何を感じてどう生き延びてきたか、どう乗り越えたかなど、経験者にしか語れないこともある。ひきこもりの時期は黒歴史かもしれないが、貴重な武器だ。
自ら会を開くとなると、場所の確保から開催時間、会で何をやるかまで、決めることがたくさんある。そういったときは、ブックレットの体験談やチェックリストが参考になる。
ブックレットの大事なメッセージの1つに、参加者から主体者へということがあると感じた。励まされてきた人が励ます立場に変わるプラスの連鎖が増えれば、ひきこもり問題も解決しやすくなるんじゃないのか。
ひきこもり当事者のナマの声が聞ける、貴重な資料でもある。現在ひきこもり中の人はもちろん、周りの家族や友人にもぜひ読んでもらいたい。