母親から離れたい人必見?井上由美子作「お母さん、娘をやめていいですか?」感想。
井上由美子さん作「お母さん、娘をやめていいですか?」の第一話をチェックした感想です。放送前の話題通り、母娘問題を深くえぐり出すドラマでした。
母娘問題に興味しんしんの人はもちろんですが、むしろそういうものに全く興味のない人こそ、このドラマをおすすめしたいです。今までの考えが、180°ガラッと変わるかもしれません。
泥沼化する母娘から目が離せない
一応ラブストーリーの要素もありますが、このドラマの見どころは「家族の泥沼」。波瑠さん演じる娘と、斉藤由貴さん演じる母親のサスペンスがメインです。
ドラマのあらすじとしては、
・親友か恋人のように仲の良い母娘
・娘がある男と親しくなる
・それをきっかけに母娘関係に変化が……
という感じです。
これだけみると、「男に振り回される二人の女」をイメージするかもしれません。しかしこれから振り回されるのは、むしろ柳楽優弥氏が演じる「男」の方です。
表面上は男を奪い合うバトルに見えますが、お互い本当に手に入れたいのは「主導権」。男というのは、単なる「小道具」に過ぎません。
もともと問題を抱えていた母娘と、関わりを持ってしまったのが運の尽き。母娘戦争の「ダシ」に利用されてしまう、むしろ被害者といえます。
そしてその飛び火は、今まで母娘問題をただ黙って見ているだけだった父親(寺脇康文氏)にも及ぶことに。しかしこちらは、単に放っておいたツケがまわってくるだけなので同情の余地なしです。
火花を散らす母娘の泥沼に、為す術もなく巻き込まれていく男たちの哀愁。そんなところも、今後の見どころではないかと思います。
一見仲が良さそうに見えるが……
ドラマの冒頭では、娘と母親は本当に仲が良いです。一見すると、何の問題もない「幸せな家族」に見えます。
しかし、この「一見仲が良さそう」というのが厄介なのです。
「仲が良すぎる」というのは、一歩間違えると「依存関係」。お互いに自立ができず、精神的に寄りかかっている状態です。
このドラマを母娘も、娘が母親の言うことを聞いているうちは良いのですが、娘が反抗しだすと母親が豹変します。あくまで母親は、「自分を必要としてくれる娘」が必要なのです。
自己肯定感のない人間
なんでこんなことになるかと言えば、母親に「自己肯定感」がないからです。
反抗というのは自立でもあります。本当なら娘の自立を喜ぶところ、自己肯定感のない親は「自立=親を否定すること」と受け取ってしまうのです。
親子関係に限らず、自信のない人は何かに寄りかかっていないと不安でしょうがありません。そのために人の顔色をいつも伺ったり、自分の味方を増やすことに心を砕きます。
私もちょっと前までは、ブログなどでちょっとネガコメを見かけると徹底してへりくだるクセがありました。そしてそのやり取りしたコメントを、人の目に触れるように公開しておくのです。
これはネガコメした人間を悪者にして、周りの同情を買おうという実にねじ曲がった目的があります。とにかく、自分を徹底して被害者に見せかけるのです。
人の前だと「一生懸命頑張ります」のような、優等生ぶった態度をとってしまうのも嫌でした。これも、「味方を増やす行動」の一環だったんだと思います。
ただそれも一人暮らしを続けるなかで、「別に認めてもらおうとしなくても良いのだ」とだんだん思えるようになりました。
「自分は今のままでも大丈夫だ」と考えられたことで、やたらと味方を増やそうとする行動は大分収まりました。自分で自分を認められれば、他人に認めてもらう必要はないんだと思います。
今も自信はない方ですが、それはそれで良しです。あまり上を見すぎず、マイペースに行った方が疲れません。
この問題は他人事じゃない
このドラマのような「一見仲が良い家族」というのは、意外と厄介です。その裏に根深い依存の問題が隠れていても、自分たちも周りも一切気付くことがありません。
暴力を振るう虐待のような「目に見える問題」ばかりが目立ちますが、むしろ「一見大丈夫そうな家族」の問題の方が、数は多いんじゃないでしょうか。
日本には「家族のことには口を出さない」のような風潮がありますが、この家族問題は社会の問題でもあると思います。もっと社会全体で取り組まないと、自信がなくて生きづらさを感じる人はいなくなりません。
しかし何より問題なのは、自分の家族がそういう問題を抱えていると気づいていない人が、圧倒的に多いことです。例え「おかしい」と思っても、「うちの家族は大丈夫」と思い込もうとすることもあります。
このドラマを見ても、「家族の問題に気づいてない」「気づいても直視できない」人は多いんじゃないかと思います。特に娘を持つお母さんほど、認められないかもしれません。
もしドラマを見ていて無性にイライラしてきたり、妙に居心地が悪くなってきたら、それは「心のなかでは問題に気付いている」サインです。そこでテレビの電源を切らずに、イライラする原因を考えてみてほしいです。
「自分の問題と向き合う」という点では、このドラマは「家族問題にあまり関心のない人」「自分は家族は大丈夫だと思っている人」にこそ見てほしいと思います。
こういう分かりにくい家族の問題に切り込むドラマは、貴重な存在だと思います。家族問題はタブー視されることが多いですが、もっとドラマやニュースの特集でも取り上げてくれると良いです。
なんとなく生きづらいと感じている人は、この作品を見たらその理由が分かるかもしれません。普通にドラマとしても面白いので、チェックしてみてください。