「WHAT IS SAPEUR ?」感想。自分には、「人生をかける生きがい」があるか?
世界一エレガントなおしゃれを楽しむコンゴの人々を紹介した「WHAT IS SAPEUR?」の感想です。
貧しいコンゴの国で、最高級ブランドスーツを着こなす人々。一見無縁そうに思えるこの2つは、どうやって結びついているのでしょうか?
サプールとはどういう人たち?
サプールとは、アフリカ大陸のコンゴに古くから存在する「ファッショニスタ」です。彼らは月収3万円で、収入の何ヶ月分もの高級ブランドスーツを着こなします。
単に「着る」のでなしに、高級スーツをファッショナブルに「着こなす」。これがサプールの条件です。彼らは個性の強い色や柄も、完璧にコーディネートしてかっこ良く見せるのです。
そのファッションセンスは、洋服がそこら中に溢れている先進国の人間よりもはるかに上回ります。アクの強いブランドスーツが、ここまでバシッと決まる人種が果たしてどれほどいるだろうかと思います。
「洋服に恵まれた環境にいるからといって、おしゃれになれるとは限らないんだな」
己の枯れたファッションセンスと引き比べながら、そうしみじみと感じました。
サプールは信念そのもの
しかしサプールの人々の魅力は、単に「おしゃれだから」というのではありません。おしゃれなスーツを着こなす、彼らの「生き方」そのものに皆憧れるのだと思います。
私が最初にサプールの存在を知ったときは、「先進国から流れてきた中古スーツを着ている人々」と勘違いをしていました。
「貧乏な国の人が、新品の高いスーツを買えるはずがない」。そんな偏見を持っていたのです。
しかし本を読んで、彼らがわずかな収入をやりくりしながら、1年近くもかけて1着のスーツを買うことを知りました。しかも清潔な身なりを保つため、家から何キロも離れた井戸へ水を汲みに行かねばならないのです。
どうしてそんな苦労をしてまで、おしゃれに身を投じるのか?それは彼らが、サプールという生き方に「人生」そのものをかけているからにほかなりません。
サプールの人は、「良いスーツを着るには、自分もそれに相応しい人格を備えなければいけない」と言います。そのためには、彼らはどんな苦労も惜しまないのです。
スーツが彼らを高め、彼らの人格がまたスーツを高める。もはやスーツは単なる衣服でなく、彼らの身体の一部なんだと感じました。
自分にとっての「サプール」とは?
サプールを見ているうちに、だんだん無視できなくなってきた疑問があります。それは、
「自分にとっての『サプール』とは、果たして何なのか?」
という問いです。
高級スーツと全身全霊で向き合う、サプールという生き方。「お前には、全身全霊をかけられるような何かがあるか?」そう問われているような気がするのです。
私も「ミニマリスト」「枯れ女」など好き勝手なライフスタイルを送っています。しかし、それにどこまで人生をかけているか?こう聞かれると、首を傾げざるを得ません。
「ミニマリストブームが終わっても、ものを持たない生活を続けられるか?」「仮に『25歳以上の女性は結婚して子供の産むこと』が法律で義務付けられても、『NO』と言えるか?」。そんなことを考えます。
「文章を書く」ということにしても、どこまで「文章」に人生をかけて向き合っていたか。在宅ライターとしてのここ1年を振り返ると、私の覚悟は全く足りなかったのではないかと思います。
「もっと良い文章を書くには、どうすれば良いのか?」。そういうことを、もっと真剣に考える必要があると痛感しました。
「全ては、スーツを最高にエレガントに着こなすため」。それがサプールの信念です。
「自分には、人生をかけても惜しくない『何か』があるか?」。単なるファッション指南を超えた、深い問いかけを残す1冊。あなたにとっての「サプール」は、どんなものでしょうか?