「THE TRUE COST~ファストファッション 真の代償~」感想。安い服の裏側とは?
今回は、ファストファッションの問題に光を当てた映画「THE TRUE COST~ファストファッション 真の代償~」の感想とレビューを紹介します。
安くておしゃれな洋服を大量に生産する裏では、何が起こっているのか。このドキュメンタリーを見た後では、今までのファッションに対する考え方が180°変わるはずです。
ファストファッションの奥に潜む闇
ファストファッション業界では、ライバル同士が激しい低価格競争を年がら年中繰り広げています。そのしわ寄せは、決まって「最も立場の弱い人たち」に集中するのです。
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低賃金・劣悪な労働環境
安いコストで服を作るには、それだけ安い給料で服を作っている人がいるということです。工場の工員たちは、每日5ドルに満たない収入で朝から晩までミシンし続けています。
賃金だけでなく、働く場所も過酷です。今から3年前の2013年には、バングラデシュにある縫製工場が崩れるという事故が起こっています。首都ダッカにある、「ラナ・プラザ」というビルです。
このとき、ビルの中にいた1,000人以上の工員が犠牲に。建物に身体を挟まれ、命のために手足を切断した人もたくさんいます。
この事故は、ビルの管理者がボロボロの建物を修繕しなかったために起こった人災です⇒安くておしゃれなファストファッションの裏側にある問題点とは?
「the true cost」も、このラナ・プラザの事故をきっかけに作られました。映画の冒頭には、事故の被害に遭った女性の衝撃的なインタビューもあります。
「異様なまでに安い服の裏には、どんなカラクリがあるのか?」。ファストファッションを買うなら、そこまで考える責任があると感じました。
環境汚染がもたらすもの
しわ寄せがいくのは、服を縫う人たちばかりではありません。材料の綿や染料作りに関わる人たちも、ファストファッションの被害者です。
綿栽培を行うインドの農村では、年間20万人以上が農薬中毒で亡くなっていると言われています。また、高価な農薬のせいで経営が悪化、あげく土地を奪われて自殺する農業者もいます。
さらに近くに染色工場がある村では、皮膚病やがん患者、身体・知的障害をもった子供が相次いでいます。企業は認めていませんが、これは染料の影響だと指摘する人もいます。
この被害の状況は、かつての日本で起こった「四大公害病」の問題にとてもよく似ています。映画の中の障害を持った子供の姿も、水俣病を患って生まれてきた子供と重って見えました。
証拠はなくとも、当事者である農民の人たちはその危険性を直感で気付いています。企業や国は、もっと被害者の声に耳を傾けてほしいと思います。
上と下の衝突
労働者の側も、ただ黙って低賃金に耐えていたわけではありません。ときには皆で協力し、賃金引き上げの協議やデモを行ったこともありました。
が、その結果起こったのは、労働者と雇用者・または労働者と国との衝突でした。労働組合を作ろうとした女性工員たちは、経営陣から殴る・蹴るの激しい暴力に遭いました。
さらに大規模デモのあったカンボジアでは、警官隊との衝突で死者が出る事態に。それでも未だ、労働条件は改善されていません。
労働者と権力側との衝突の光景は、戦争のようでした。争いとは無関係にみえるファッション業界の裏では、むごたらしい流血沙汰が平気で起こっていました。
大量生産・大量廃棄
大量生産の先には、大量廃棄が待っています。日本でも、年間100万トンの衣料品が廃棄されているというデータがあります。
安い洋服は気軽に買える分、「使い捨て感覚」になりがちです。そのために、まだ着られる服が毎年大量に捨てられていることになります。
「ならリサイクルに出せば良いじゃないか」というと、そこにも問題が。ファストファッションのリサイクル品は、質が悪く有効活用されないことが多いからです。
大量のボロボロ服が送られる発展途上国では、余った服の処理が問題に。もはや「リサイクル云々」ではなく、服を大量に買う行為自体を考えなおさねばならないということです。
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私たちにできることは?
この映画を見ても「私にはどうしようもない」と感じる人もいると思います。けれど、それは誤解です。私たち庶民にも、今すぐできることはあります。
まずは「事実を知ること」。そのうえで、ファストファッションとの付き合い方を変えることです。
「ファストファッションは買わない」「手持ちの服を大切に着続ける」「中古服を買う」「リユースの検討」など、身近にできることは色々あると思います。
ボロボロの服は、ウエスにするという手もあります⇒トイレ掃除から窓拭きまで、シンプル派には簡単で万能なウエスがおすすめ
この問題の奥にある真の原因は、紛れも無い、私たち「買う側」にあります。1人1人が意識を変えないかぎり、この問題は解決しないのではないでしょうか。
低価格競争を繰り広げるファッション企業にも、責任はあります。けれど会社を動かすには、私たちの方から企業に「NO」を突きつけることが必要です。
「その服は私たちの血でできている」。映画の中に出てきた女性の言葉ですが、これはファストファッション問題を象徴しています。
「服を作ってくれている労働者に感謝しよう」。そんな生やさしい言葉では、この問題は片付けられないと強く感じます。本当に感謝しているなら、やるべきは行動を起こすことです。
そのきっかけとしても、「THE TRUE COST」はおすすめです。少しでも多くの人に、この問題を知ってほしいと思います。