佐々木典士さん「ぼくたちに、もうモノは必要ない。」感想。ミニマリストとは何者か?
2015年にベストセラーとなったミニマリスト本「ぼくたちに、もうものは必要ない。」の感想です。ミニマリストになりたい人だけでなく、「ミニマリストってどんな人なの?」と疑問な人にもおすすめしたい本です。
著者の佐々木典士さんもかつては汚部屋住人で、そこからミニマリストへシフトしていきました。佐々木さんは「ミニマリストになって僕の人生は変わった」と本の中で綴っています。
「なぜ、ものを減らすと人生が変わるのか?」。佐々木さんの体験を通して、ものがない生活がどういうものかが見えてきます。
片付け本ではなく、ミニマリストの入門書
最初に注意すべきは、この本は「片付け本ではない」ということです。「ものがない暮らしがどんなものか?」「ものが少ないと生活がどうかわるか?」に重点が置かれています。
途中「捨てる方法最終リスト」という章もありますが、「ものを減らすための考え方」が主です。具体的な片付け法や収納法を期待している人は、別の片付け本がおすすめです。
それでも「ミニマリストになりたい」「部屋が汚くてウンザリ」という人には、参考になる部分が大きいです。汚部屋住人だった頃の佐々木さんの生活模様は、読んでいて「分かる~」という人が大勢いると思います。
「ものを増やしても幸せにはなれない」という考えは、誰もが薄々気付いているはずです。この本は、身近な「もの」のことを考える良いきっかけになるのではないでしょうか。
誤解されがちなミニマリストを分かりやすく説明
また、世間で何かと誤解されがちなミニマリストについて、この本では分かりやすく説明されています。
テレビなどの特集では「ものを持たない」という部分ばかりに目がいき、「何でも捨てる」「文明の機器を持たない」「ものが嫌いな人」などのイメージができあがっているように思います。
佐々木さんはミニマリストのことを「大事なもののために減らす」人だと言っています。ものを捨てるは、大事なものを本当に大切にするため。ただむやみにものを減らすのは、単なる「捨て魔」です。
佐々木さん自身の大事なものは、本書の最後に書かれています。そこに辿り着くまでには、色々な道のりがあったのかもしれないと思わせるものでした。
「なんでミニマリストはものを捨てるの?」「ものが多いとミニマリストになれないの?」などの疑問は、この本を読めば「ああそうか」と納得できます。
「ものが嫌いな変人」というイメージを抱いている人も、なぜそういう考えに行き着いたのかが分かるはずです。世間的なミニマリストのイメージが、いくらか変わるかと思います。
ものを減らしたくなったら
この本を読んだ後、「ミニマリストになりたい!」と決意する人もいるかと思います。けれどここで、「ミニマリストはこうあるべき」というイメージに引っ張られると泥沼にハマるかもしれません。
この本を読んで私が感じた、「ミニマリストの落とし穴」を挙げてみます。
人と比べないこと
佐々木さんは本の中で「人と比べなくなった」と言っています。ものを持つことを止めて、世間的な評価が気にならなくなったとありました。
とはいえ、「はいそうですか」と簡単にいかないのが人の常です。ミニマリストを目指すと、高確率で「もの減らし競争」にハマるのです。
私もこの本を読んだ後「佐々木さんのようにものを減らさねば」という妙なプレッシャーを感じました。「もっと少ない荷物でないと、ミニマリストになれない」と思ってしまったのです。
これは明らかに、自分と人を比べています。ほかのミニマリストと自分を比べて、「私は何でものが捨てられないんだろう」と勝手に悩んでいました。
が、佐々木さんの言うように、自分と人を比べてもしょうがないのです。「ミニマリスト」にはルールも正解もないのだから、答えは自分で探すしかありません。
「これを持っているからミニマリストになれない」というのは、ないはずです。自分が納得して残しているものなら、残せば良いのだと今は思っています。
ものを捨てれば、本当に自分は変わるか?
「ものを減らせば、今より幸せになれる」。こう考えると、ただの捨て魔と化す危険性があります。
確かに佐々木さんは、ものを減らして人生を変えた人です。けれどそれは、佐々木さんが「ものを捨てること」「持たない暮らし」を通して自分と向き合ったからだと思います。
そこを抜きにして「ものを減らしさえすれば人生バラ色になる」というのは、大きな誤解です。「臭いものに蓋」の考えで荷物を一気に全捨てしても、おそらく何も変わりません。
佐々木さんは、幸せは「なる」ものではなく「感じる」ものだと言っています。今この瞬間に「幸せだ」と感じれば、その人は幸せなのです。
幸せを感じられる自分になるには、「ものを減らす」ことも有効です。しかし一番大事なのは、その中で「幸せを感じられていない自分」と向き合うことです。
ものを捨てる中で、「ちっぽけな自分」「わがままな自分」「人目を気にしてばかりの自分」などが見えてくると思います。そういう自分と向き合う勇気が、人を変えるのだと思います。
ミニマリストがどういうものかを知るには、この本は分かりやくておすすめです。ミニマリストの人たちは、それぞれの目的や理想があってものを減らしているのが見えてきます。
「もの」を追い求めることに疲れた人には、「もの」と決別する良いきっかけをくれるかもしれません。